叶わない。敵わない。

好きだと気付いたとき

君の視線の先に在る感情にも気付いてしまった。

哀しくて、報われない。

不毛な俺の、片想い。












「りょ      

      う。と、呼んだはずのその声は喧騒に紛れて届くことはなかった。
本当はもっと大きな声で呼べば良かったのかもしれない。
追いかけて、肩を掴んで、腕を引いて、自分は此処にいるのだと、知らせれば良かったのかもしれない。
それが出来なかったのは、きっと亮のとなりにいる人があまりにも自然で、誰が見てもお似合いの二人だったからだ。
エイトの時の亮とも、NEWSの時の亮とも違う、その柔らかく優しい表情にトクン。と跳ねた心臓には、同時にどうしようもない程の痛みが襲ってくる。
自分の知らない人みたいな亮に、見たくなかったのはその表情なのか、それともそのとなりにいる人物なのか。
自分でもわからないまま、人ごみに紛れる二人を見送った。





、はよ来いって」

立ち止まったままの俺に気付かずに数メートル先を歩いていた横山が踵を返して近付いてくる。

「あ、ごめん」

短いその一言だけを放つと、俺は横山のとなりへと並んだ。

「…錦戸見てたん?」

普段とは何処か違うその表情で、横山は俺をじっと見ながら問いかけてくる。

「気付いてた?」

      綺麗な人だったね。と、付け足して、あははと笑った。





何もこんなときに逢わなくてもいいのに。
何百、何千って人が溢れてるこんな場所で、偶然過ぎるこの時間に、どうして出逢ってしまうんだろう。
学生時代に習った数学を思い出してもその確率の計算の仕方なんて到底わからない。

ただ、ひとつだけ。

はっきりと云えるのは、亮のとなりに俺の居場所はもう、見当たらない。

痛みばかりが大きくなる胸の辺りを、ぎゅっ。と握り締めた。









「何で錦戸なんや?」

歩きながら、特別、俺を見ることもなく横山がそう放つ。
その真意を何故だか自然と見抜けてしまって、溜息を吐き出した後に小さく呟いた。

「…そんなの、もうわかんないよ」

      わかんないくらい、好きだから。

それは、喧騒に紛れてきっと横山には届いていない。
それほどに、小さな声だった。

信号待ちで立ち止まっていた横断歩道の人ごみから女の子の声で「あれってヨコとくんじゃない?」と聴こえた直後に信号が変わる。

「横山、気付かれたよ。急ごう」

背中を軽く押して、一歩前に出る。
一斉に流れ出した人の波に紛れる様に歩こうとしたのに。
それなのに。
人の流れに逆らいながらも、横山は立ち止まったまま其処を動こうとはしなかった。
通り過ぎる周囲の視線が妙に刺さる。

「よこや      

手を引こうと差し出したその腕ごと、一瞬に引き寄せられて俺の身体はすっぽりと横山の中に納まった。

「ばっ、ばか!何やってんだよ!」

必死に抵抗しても腕の力は強まるばかりでびくともしない。

「人が見てるって!」

「見られとってもええやん。どうせ企画か何やて思うやろ」

「横山!」

自分たちがどういう状況に置かれているのか、傍から見たらすごく異形で、滑稽な気がした。

      せやから、俺にしとけばよかったんや」

確かにそう囁かれたその言葉に動きを止める。
抱き締められている所為で全く見ることの出来ない横山は、今、どんな表情なんだろう。

「俺やったら…のこと、離さへんのに」

数回の点滅を繰り返した後に、再び、信号が赤に変わる。

トクン。トクン。と、伝わる横山の心音に眩暈さえ感じてしまって。


冷めた視線や、好奇の視線が気にならない程に

その腕の温かさが優しくて      切なかった。










    なんであんな奴のことが好きやねん…


       かなわへんことぐらい、わかってんねん。
       それでも、今は。

       今だけは、このままで。















061006

書いてる途中から
これって横山?横山なのか??
と自問自答の繰り返し(笑)
こんなヨコも有ですか?(汗)